
噛み合わせ治療咬合分析器とフェイスボウで顎位を的確に測定し、スプリントや補綴で安定した咬合へ導きます。
肩こりや頭痛の軽減まで視野に入れた調整を行います。
お口と全身の健康を支える、正しい噛み合わせ作り
「噛み合わせ」という言葉を聞いて、皆様はどのようなことを思い浮かべるでしょうか。
単に「歯と歯がきちんと当たる」ことだと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、噛み合わせは、私たちが食事を美味しくいただき、はっきりと発音し、自然な笑顔を作るためだけでなく、お口の中の健康、顎関節や筋肉のバランス、さらには全身の姿勢や健康状態にまで深く関わる、非常に重要な要素なのです。
多くの方がご自身では気づかないうちに、何らかの噛み合わせの問題を抱えている可能性があります。
それは、目に見える歯並びの乱れだけが原因とは限りません。
当院では、この「噛み合わせ」という要素を、歯科治療の根幹をなすものとして非常に重視しています。
単に一本一本の歯を見るだけでなく、上下の歯がどのように接触しているか、顎の関節(顎関節)や筋肉はスムーズに機能しているか、そして、お口の状態が全身にどのような影響を与えているか、あるいは受けているか、そうした包括的な視点を持って診断と治療に取り組んでいます。
そして、私たちの噛み合わせ治療における基本的な考え方は「原因をしっかりと考えた上で、その方本来の正しい噛み合わせの状態に戻す」ことを目指す、という点にあります。
なぜ噛み合わせが悪くなったのか、その根本原因を探り、そこからアプローチすることで、
その場しのぎではない、長期的に安定した健康な状態を回復・維持するためのお手伝いをしたいと考えています。
正しい噛み合わせとは?

では、「正しい噛み合わせ」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
一般的に、以下のような要素が満たされている状態が、機能的にも、そして長期的にも安定した、良い噛み合わせと考えられています。
- 上下の歯が、適切な位置で、できるだけ多くの点で均等に接触していること。
- 顎を動かしたときに、歯がスムーズに誘導され、特定の歯だけに強い力がかからないこと。
- 食べ物を噛むときに、効率よく力が伝わり、しっかりと噛み砕けること。
- 顎関節が、安定した正しい位置にあり、痛みや雑音なくスムーズに動かせること。
- 口を開け閉めしたり、食べ物を噛んだりする際に使う筋肉(咀嚼筋)が、バランスよく機能し、過度な緊張がないこと。
- 見た目にも、歯並びが整い、顔貌との調和が取れていること。
大切なのは、「見た目の歯並びが良いこと」と「機能的に正しい噛み合わせであること」が、必ずしもイコールではない、という点です。
一見きれいに並んでいるように見えても、実は噛み合わせのバランスが悪く、特定の歯や顎関節に負担がかかっているケースも少なくありません。
私たちは、見た目の美しさだけでなく、これらの機能的な要素を全て満たした、長期的に安定する「正しい噛み合わせ」を追求しています。
噛み合わせが悪くなる原因 ~なぜバランスが崩れるのか?~
正しい噛み合わせは、様々な要因によってバランスを崩してしまうことがあります。
その原因は一つだけではなく、複数の要因が複合的に関与している場合がほとんどです。
歯の問題
- 歯並びの乱れ(不正咬合)
出っ歯、受け口、叢生(ガタガタ)、すきっ歯など、歯並び自体が悪いと、当然ながら正しい噛み合わせは得られません。 - 歯の喪失
虫歯や歯周病などで歯を失い、そのまま放置していると、隣の歯が倒れたり、噛み合う歯が伸びてきたりして、噛み合わせが大きく変化します。 - 不適合な詰め物や被せ物
過去に治療した詰め物や被せ物の高さが合っていなかったり、形態が悪かったりすると、そこが原因で噛み合わせのバランスが崩れることがあります。 - 歯の摩耗・破折
歯ぎしりや食いしばり、あるいは加齢などによって歯がすり減ったり、欠けたりすると、噛み合わせの高さやバランスが変わってしまいます。
顎関節・筋肉の問題
- 顎関節症
顎関節自体に問題(関節円板のずれなど)があると、正しい顎の位置で噛むことができなくなります。 - 歯ぎしり・食いしばり
無意識に行われるこれらの癖は、歯や顎関節に過剰な負担をかけるだけでなく、噛み合わせに関わる筋肉(咀嚼筋)を常に緊張させ、バランスを崩す原因となります。
生活習慣・癖
- 片側だけで噛む癖
いつも同じ側だけで食べ物を噛んでいると、片側の筋肉ばかりが発達したり、顎がずれたりする原因になります。 - 頬杖、うつ伏せ寝、猫背などの姿勢
日常的な姿勢の悪さや癖が、顎の位置や筋肉のバランスに影響を与え、噛み合わせのずれを引き起こすことがあります。 - 精神的なストレス
ストレスは、歯ぎしりや食いしばりを誘発したり、筋肉の緊張を高めたりして、間接的に噛み合わせに影響を与えることがあります。
全身的な要因
- 体の歪み
骨盤の歪みなど、全身の骨格のバランスの崩れが、顎の位置や噛み合わせに影響を及ぼすことも考えられています。 - 加齢による変化
年齢とともに、歯や歯周組織、筋肉、骨などが変化し、噛み合わせも徐々に変わっていくことがあります。
このように、噛み合わせが悪くなる原因は多岐にわたります。
だからこそ、表面的な問題だけでなく、その根本原因をしっかりと見極めることが、適切な治療への第一歩となるのです。
噛み合わせが悪いと、どんな影響がある?
噛み合わせのバランスが崩れると、お口の中だけでなく、全身に様々な不調や問題を引き起こす可能性があります。
- 口腔内の問題
- 特定の歯に過剰な力がかかり、歯が割れたり、欠けたり、すり減ったりしやすくなる。
- 歯と歯茎の境目に力が集中し、知覚過敏や歯周病の悪化を招くことがある。
- 詰め物や被せ物が頻繁に外れたり、壊れたりすることがある。
- 歯ぎしりや食いしばりが助長されることがある。
- 顎関節への影響
- 顎関節に負担がかかり、顎関節症(顎の痛み、口が開けにくい、音が鳴るなど)を引き起こしたり、悪化させたりする。
- 筋肉への影響
- 噛む筋肉(咀嚼筋)が常に緊張し、顎のだるさや疲れ、顔の歪みなどを引き起こすことがある。
- 首や肩の筋肉にも影響が及び、慢性的な肩こりや首のこりの原因となることがある。
- 全身への影響
- 頭痛(特に側頭部の緊張性頭痛)、めまい、耳鳴りなどの原因となることがある。
- 噛み合わせのずれが、体の重心バランスや姿勢に影響を与えることがある。
- 原因不明の不定愁訴(なんとなく体調が悪い、だるいなど)の背景に、噛み合わせの問題が隠れていることもある。
- 食事への影響
- 食べ物が噛みにくく、食事が楽しめない。
- うまく噛めないために、食べこぼしが多くなる。
- 審美的な影響
- 歯並びだけでなく、顔の左右のバランスが崩れたり、口元の印象が変わったりすることがある。
もし、あなたがこれらの症状に心当たりがある場合、それはもしかしたら噛み合わせの問題が関係しているかもしれません。
当院の噛み合わせ治療法 ~元の状態を目指して、多角的にアプローチ~
噛み合わせの治療は、原因や症状に応じて、様々な方法を組み合わせて行います。
目指すのは、その場しのぎの改善ではなく、患者様本来の、機能的で安定した噛み合わせを取り戻すことです。
スプリント療法(マウスピース治療)

「オクルーザルスプリント」や「マウスガード」と呼ばれる、患者様の歯型に合わせて作製したマウスピース型の装置を、主に就寝時などに装着していただく治療法です。
スプリントには、顎関節や筋肉への負担を軽減したり、歯ぎしりや食いしばりから歯を守ったり、顎を正しい位置へ誘導したりする効果があります。
顎関節症の治療としても、まず行われることが多い方法です。
噛み合わせ調整(咬合調整)

特定の歯だけが強く当たっている(早期接触)など、噛み合わせのバランスを崩している箇所を、歯の表面をごくわずかに削合(削る)することで調整し、全体の噛み合わせのバランスを整える治療法です。
削るのはエナメル質の範囲内のごく少量ですが、非常に精密な技術と診断能力が要求されます。
削りすぎると逆効果になるため、慎重に行います。
補綴(ほてつ)治療

古い詰め物や被せ物の高さが合っていなかったり、形態が悪かったりすることが、噛み合わせの問題の原因となっている場合があります。
そのような場合には、問題のある修復物を除去し、正しい噛み合わせを考慮して、新しい詰め物や被せ物(セラミックなど)に作り直します。
失われた歯がある場合には、ブリッジや入れ歯、インプラントなどで補い、全体の噛み合わせを再構築することも重要です。
矯正治療

歯並びそのものが原因で、噛み合わせが大きくずれている場合には、矯正装置を用いて歯を動かし、理想的な位置へと誘導する矯正治療が必要となります。
歯を正しい位置に並べることで、機能的にも審美的にも優れた、安定した噛み合わせを作ることができます。
当院では、矯正専門医と連携して治療を行います。
生活習慣指導・筋機能訓練(MFT)

噛み合わせに悪影響を与える、片側噛みや頬杖などの癖を改善するための指導や、顎周りの筋肉の緊張を和らげるためのストレッチ、正しい舌の位置や飲み込み方を覚える筋機能訓練(MFT)なども、必要に応じて行います。
どの治療法を選択するか、あるいはどのように組み合わせていくかは、精密な診断結果と、患者様との話し合いの上で決定します。
噛み合わせ治療の重要性 ~全ての歯科治療の基礎として~
実は、この「噛み合わせ」という要素は、虫歯治療、歯周病治療、インプラント治療、入れ歯治療といった、ほぼ全ての歯科治療において、その成功と長期的な安定性を左右する、非常に重要な基礎となるものです。
例えば、どんなに良い材料で被せ物を作っても、噛み合わせのバランスが悪ければ、その被せ物がすぐに壊れたり、噛み合う相手の歯を傷めたり、顎関節に負担をかけたりする可能性があります。
歯周病治療においても、特定の歯に過剰な力がかかっていると、歯周病の進行を早めてしまうことがあります。
噛み合わせの問題を考慮せずに治療を進めてしまうと、治療がうまくいかなかったり、再発したり、別の新たな問題を引き起こしたりするリスクがあるのです。
だからこそ当院では、どのような治療を行う場合であっても、常に患者様の「噛み合わせ」の状態を念頭に置き、治療後の噛み合わせが機能的で、調和のとれた、安定したものになるように配慮しています。
必要であれば、他の治療と並行して、噛み合わせの治療も行います。

健やかな毎日を送るための「正しい噛み合わせ」
噛み合わせは、お口の中だけの問題ではなく、皆様の全身の健康や、日々の快適な生活にまで影響を及ぼす、とても大切な要素です。
もしあなたが、顎の痛みや疲れ、肩こりや頭痛といった原因不明の不調、あるいは、お口の中の些細な違和感などにお悩みでしたら、
それはもしかしたら、噛み合わせのバランスが崩れているサインかもしれません。
当院では、患者様のお話をじっくりと伺い、精密な検査を通して、噛み合わせの問題の根本原因をしっかりと突き止めます。
そして、その原因に対する適切なアプローチにより、患者様本来の、機能的で調和のとれた噛み合わせを取り戻すためのお手伝いをいたします。
噛み合わせについて気になることがございましたら、どうぞお気軽に、私たちにご相談ください。
正しい噛み合わせを手に入れることが、あなたの健やかな毎日への第一歩となるかもしれません。