ボトックス治療咬筋や側頭筋に正確な量を注入し、筋緊張を緩和して歯ぎしりや顎関節の痛みを軽減します。
極細針と表面麻酔で施術時の痛みを抑え、効果と安全性を確認しながら定期フォローを行います。

歯科領域におけるボトックス治療 ~歯ぎしり・食いしばり、顎の痛み、ガミースマイルのお悩みに~

「ボトックス」と聞くと、多くの方はシワ取りなどの美容医療をイメージされるかもしれません。

しかし近年、ボトックスはその筋肉の働きを和らげる作用から、歯科の領域においても、様々なお悩みを改善するための有効な治療法の一つとして応用されるようになってきています。

当院では、

「夜中の歯ぎしりがひどくて、朝起きると顎が疲れている」

「無意識に強く食いしばってしまい、歯がすり減ってきた」

「顎関節症の痛みがなかなか良くならない」

「笑った時に歯茎が見えすぎるのが気になる(ガミースマイル)」

といったお悩みをお持ちの患者様に対して、ボトックス治療を選択肢の一つとしてご用意しております。

ここでは、歯科領域におけるボトックス治療とはどのようなものか、その仕組みや効果、安全性などについて、詳しくご説明させていただきます。


ボトックス治療とは? ~筋肉の働きを和らげる仕組み~

ボトックス治療とは|すずき歯科

ボトックス治療で使用する薬剤は、「A型ボツリヌス毒素製剤」と呼ばれるものです。

これは、ボツリヌス菌という細菌が作り出す天然のタンパク質(ボツリヌストキシン)を、医療用に精製し、ごく微量を使用したものです。

「毒素」と聞くと少し怖い印象を持たれるかもしれませんが、適切な量を、適切な部位に、専門的な知識を持った医師が使用する限りにおいては、安全性が確立された医薬品として、様々な医療分野で広く用いられています。

ボトックスの主な作用は、筋肉を動かす際に働く神経伝達物質「アセチルコリン」の放出を抑制することです。

これにより、神経から筋肉への命令伝達が一時的にブロックされ、筋肉の過剰な収縮や緊張を和らげる効果を発揮します。

筋肉の動きを完全に止めてしまうわけではなく、あくまで「働きを和らげる」のが特徴です。

この作用を利用して、歯科領域では、主に噛む筋肉(咀嚼筋)の過緊張や、表情を作る筋肉(表情筋)の一部の働きを調整することで、様々なお悩みの改善を目指します。


歯科領域でのボトックス治療の応用

当院では、主に以下のような症状やお悩みに対して、ボトックス治療を行っています。

歯ぎしり・食いしばり(ブラキシズム)の緩和

歯ぎしり|すずき歯科

睡眠中や、日中に集中している時などに、無意識のうちに歯をギリギリとこすり合わせたり、ギュッと強く噛みしめたりする癖を「ブラキシズム」と呼びます。

ブラキシズムは、

  • 歯の過度な摩耗(すり減り)や破折(割れる、欠ける)
  • 詰め物や被せ物の破損
  • 顎関節への過剰な負担(顎関節症の原因・悪化)
  • 咀嚼筋の疲労や痛み
  • 頭痛や肩こり といった、様々なお口や全身のトラブルを引き起こす原因となります。

多くの場合、ブラキシズムの治療としては、まず就寝時にマウスピース(ナイトガード)を装着し、歯や顎への負担を軽減する方法が選択されます。

しかし、マウスピースだけでは力のコントロールが難しい場合や、日中の食いしばりが強い場合などに、ボトックス治療が有効な選択肢となります。

具体的には、主に「咬筋(こうきん)」という、下顎を閉じる際に強く働く筋肉(エラの部分にある筋肉)にボトックスを注入します。

これにより、咬筋の過剰な緊張が和らぎ、歯ぎしりや食いしばりの力が弱まる効果が期待できます。

歯や顎への負担が軽減され、それに伴う様々な症状の緩和に繋がります。

顎関節症に伴う筋肉の痛みの緩和

顎関節症とは|すずき歯科

顎関節症の原因は様々ですが、その症状の一つとして、顎周りの筋肉(咬筋や側頭筋など)の痛みやこりが挙げられます。

これは、噛み合わせの問題やストレス、歯ぎしり・食いしばりなどによって、筋肉が常に緊張した状態になることが原因と考えられます。

このような筋肉由来の顎関節症の痛みに対して、ボトックス治療が有効な場合があります。

痛みの原因となっている筋肉(主に咬筋や側頭筋)にボトックスを注入することで、筋肉の過剰な緊張を和らげ、痛みを軽減させる効果が期待できます。

顎関節症の他の治療法、例えばスプリント療法(マウスピース)や理学療法などと組み合わせて行うこともあります。

ガミースマイル(歯茎の過剰な露出)の改善

ガミースマイル|すずき歯科

「ガミースマイル」とは、笑った時に上唇が通常よりも上に上がりすぎてしまい、歯茎(歯肉)が広範囲に見えてしまう状態のことを指します。

病気ではありませんが、見た目を気にされる方が少なくありません。

ガミースマイルの原因はいくつか考えられますが、その一つに、上唇を引き上げる筋肉(上唇挙筋群)の働きが強すぎることが挙げられます。

このような場合に、ボトックス治療が有効です。

原因となっている筋肉にボトックスを適量注入することで、筋肉の働きを少し弱め、笑った時の上唇の上がり具合を抑えます。

これにより、歯茎の見える面積が減少し、よりバランスの取れた、自然で美しい笑顔を作ることが期待できます。

比較的簡単な処置で、審美的な改善効果が得られるのが特徴です。


ボトックス治療の流れと効果、注意点

治療の流れ

  1. カウンセリング・診査診断
    お悩みやご希望を伺い、お口や筋肉の状態を診察し、治療計画をご説明します。
  2. 麻酔クリーム塗布(必要な場合)
    痛みを軽減するために、注入部位に麻酔クリームを塗布し、時間を置きます。
  3. ボトックス注入
    注入部位を消毒し、目的の筋肉にボトックスを正確に注入します。
    注入自体にかかる時間は、通常数分程度です。
  4. 術後の確認・注意点説明
    注入後の状態を確認し、ご帰宅後の注意点などをご説明します。

効果の発現と持続期間

ボトックスの効果は、注入後すぐ現れるわけではありません。

通常、注入してから数日~1週間程度で徐々に効果が現れ始め、約1~2ヶ月後に効果が安定してきます。

効果の持続期間には個人差がありますが、一般的には3ヶ月~6ヶ月程度です。

効果を持続させるためには、定期的に(通常4~6ヶ月ごと)再注入を行う必要があります。

繰り返し注入することで、効果の持続期間が長くなったり、筋肉そのものが少し小さくなったりする(歯ぎしり・食いしばりの場合)ことも期待できます。

治療後の注意点

  • 注入当日は、血行が良くなると内出血などが起こりやすくなるため、激しい運動、長時間の入浴、サウナ、飲酒などはお控えください。
  • 注入部位を強く揉んだり、マッサージしたりしないでください。薬剤が意図しない範囲に広がる可能性があります。
  • まれに、注入部位に軽い痛み、腫れ、赤み、内出血などが生じることがありますが、通常は数日で自然に治まります。
  • ごくまれに、アレルギー反応や、薬剤が効きすぎることによる表情のこわばりなどが出ることがあります。何か異常を感じた場合は、速やかにご連絡ください。
  • 安全性への配慮から、妊娠中・授乳中の方、特定の神経・筋肉疾患をお持ちの方などは、ボトックス治療を受けることができません。

お悩みを解決する、もう一つの選択肢として

ボトックス治療は、これまでマウスピースや他の治療法だけでは十分に改善しなかった、頑固な歯ぎしりや食いしばり。

あるいは、顎関節症に伴う筋肉の痛み。

そして、審美的なお悩みであるガミースマイルに対して、有効な解決策となる可能性を秘めた治療法です。

もちろん、全ての方に適応となるわけではありませんし、メリット・デメリットもあります。

当院では、患者様のお悩みを丁寧にお伺いし、正確な診断に基づいて、ボトックス治療が本当にその方にとって有益な選択肢となるのかを、慎重に判断いたします。

そして、治療を行う際には、安全性と快適性に最大限配慮し、患者様にご満足いただける結果を目指してまいります。

もし、あなたが歯ぎしりや顎の痛み、ガミースマイルなどでお悩みでしたら、「ボトックス治療」という選択肢について、まずは一度、お気軽に当院にご相談ください。

あなたの悩みを解決するための、新しい道が開けるかもしれません。

すずき歯科クリニック

営業時間

診療時間
9:00 - 12:30
14:00 - 19:00
【休診日】日曜・祝日
=9:00 - 13:30